商標調査の結果に類似した先願の商標があるとなった方へのアドバイス

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表
有料職業紹介許可有

商標調査の結果に類似した先願の商標があるとなった方へのアドバイス

問題の所在

このページを読まれている方は、

取りたい商標があって、それについて申請(出願)しようとしたところ、
商標調査の結果、弊所(弁理士事務所)から、

類似する先願があり登録できない可能性がある!

と言われた場合を想定しております。

なお、識別力がないから登録が難しいとのアドバイスの場合については、以下のページを参照ください。
記述的商標(識別力のない商標)(=価値ある商標)についての説明:標準文字についての説明:ロゴと文字の違いも含めて

簡単な結論

一番安易なアドバイスとしては、

商標変更してください!

です。

弁理士事務所としては、もっとも、安易かつ安全なアドバイスです。
正直、過去何度もほかの事務所の調査結果を見せていただいたことがありますが、
このような、アドバイスとも言えない結果を見てきました。

せめて、変更の方向性ぐらい出せや!と思います。
ダメというだけなら、馬鹿でもできると私は思います。

では、なぜ、そのような変更のアドバイスをしないかというと、
アドバイスした内容でも登録できないと、責任問題になるからです。
大変だからです。

ただ、あえて擁護すると、

これから書いていくことよりは、やはり

安易かつ確実です!

できれば、弊所も、このアドバイスにとどめたいというのが本音です。

でも何とかしたい

前述したように、安易かつ確実な商標変更が難しい場合があります。
そのような状況の方に対して、以下のアドバイスをさせてください。

ただ、下記の方法にはリスクがあり、それを選ぶか否かは経営判断になります。

類似する先願があった場合

登録できない=使えないとはならない

確かに、先願があって登録できない可能性があるということだと、
今後、その商標は使えないと思うのが普通です。

しかし、実は、必ずしもそうではないです。

商標権の登録は、一般には、商標の類似よりも広い範囲で他人の登録を排除することが多いです。

つまり、一般には、商標が登録できないような先願があっても、使いづつけることができる場合もあるということです。

もうちょっと、説明いたしますと、

商標権の登録の際には、もしかしたら消費者などが間違うかもしれませんという範囲について、登録を拒絶します。

他方、商標権侵害となるには、消費者がこれは間違って買っちゃうだろうというそれなりの根拠がないと侵害とならないのです。

例えば、
焼き肉キングが先願である場合に、「王様の焼肉」を出願した場合に登録の可能性は高くないです。

他方、消費者がこの両者があったときに間違うかというと、普通の場合は間違わないよね。
と通常はいえます。
もちろん、この場合に、「王様の焼き肉」の後に「king」などの英語を入れているような場合や、
色合いなどで似せているなどの場合には、侵害になってしまうと思います。

このように、登録できない=使用できないとは一概に言えません。

もちろん、できるだけ間違わないように、広告の雰囲気、お店の雰囲気などを似せないようにすることは大事です。

では登録を目指さなくていいか

このように書くと、商標権取らなくていいのではと思われたと思います。

しかし、このような場合でも商標権の取得を目指すべきです。

なぜなら、前述の侵害非侵害の判断は最終的に裁判所が、消費者が間違う可能性がある、そうではないと、
判断するのですが、
この時の判断は、いうなれば裁判官の主観にかなり左右されます。

このようなときに、確かに似ている部分はあるけれども、ちゃんと特許庁に商標出願をして権利を取っています。
と言えれば、裁判官も、特許庁の判断には拘束されませんが、一応専門官庁が判断して非類似ということならば、
非類似である可能性が高いとの判断になる確率を上げられます

また、裁判前に相手から警告が来ることが多いですが、
その際にも、特許庁へ出願して非類似との判断の結果、商標権を取得しており、
その範囲で使っています。ということもできます。

多少、商標権の範囲を超えた使い方をして、警告があっても、
すいません、その範囲に戻るので許してくださいということもできます。
一種の安全地帯(本当に安全かは、裁判所が判断するので、確実ではないです。)を作ることもできるのです。

結論

以上から、先願があっても、商標権の取得可能性があまりに低い場合、
商標を簡単に変更できるような場合以外は、まずは、商標権の取得をめざすというもの経営判断として、合理的なのです。

もちろん、最も安全なのは、商標変更です。
ただ、それとて、変更した商標が今度は簡単にとれるとも限らず、そちらも先行商標がある可能性もあるのです。

商標の取得可能性を高める工夫

商標の取得可能性を高めるための、商標の大幅変更以外の方法は、例えば以下のような方法があります。

① すでに取得済みのほかの商標と組み合わせる
② ロゴ化してみる
③ 先願が漢字なら、こちらは、英語化してみる

等です。これらをしても結果は変わらないかもしれませんが、取得の可能性は上げられる可能性があります。

不使用取り消し審判

先の商標があって、非類似を主張しても審査官がどうしても、類似と判断する場合は、
相手が、その商標を直近3年使っていないならば、不使用取消審判も可能です。

ネットなどで検索して、使ってなさそうなら、

出願し、拒絶理由通知をが来たときには非類似の主張をし、それでもダメなら、
不使用取消審判を請求するという方法もあるのです。

関連ページ

不使用取消審判:登録時の注意!

特許庁の不使用取消審判のページ

©弁理士 植村総合事務所 所長 植村貴昭

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