BRIGHTNING WASH 識別力(商標法第3条第1項第3号):辞書の恣意的な利用・取引の実情の恣意的な選択
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 有料職業紹介許可有 |
BRIGHTNING WASH 識別力(商標法第3条第1項第3号):辞書の恣意的な利用・取引の実情の恣意的な選択
1 拒絶理由の内容
「現代用語の基礎知識 2020年度版」から「BRIGHTNING」について、「化粧で肌を明るくすること」と認定されました。
また、「ランダムハウス英和大辞典」から「WASH」について、「洗う」と認定されました。
さらに、本願商標の「せっけん類、化粧品」等の分野において、のカタカナ表記「ブライトニングウォッシュ」の文字がくすみをなくし、肌を明るくする効果のある洗浄用商品に使用されていることを示しました。
その結果、本願商標の「BRIGHTNING WASH」を指定商品の「せっけん類、化粧品等」に使用する場合には、くすみをなくし、肌を明るくする効果のある洗浄用商品と認識するにすぎないと判断されました。
その結果、商標法第3条第1項第3号に該当すると判断されました。
2 意見
(1) 広辞苑にない
特許庁の審査官殿は、皆様、大変広辞苑の権威を大事にされておられます。
その結果なのだと思いますが、ほとんどの場合広辞苑を中心に言葉の意味を認定されておられます。
しかし、ブライトニングについては、なぜ、広辞苑を引かれていないのでしょうか。
それは、審査官殿にとって都合が悪いからではないでしょうか。
つまり、広辞苑にはブライトニングについて全く記載がありません。
広辞苑は初版は古いですが、第7版となっており、現代用語も積極的に取り込んでおります。
そのような、権威ある広辞苑に記載がない言葉というのは、それ自体が、造語に近いものであると思料致します。
一般用語の意味であると認定されるのであれば、この広辞苑にないことのご説明をいただきたく存じます。
(2) 現代用語の基礎知識 2020年度版
審査官殿は、「現代用語の基礎知識 2020年度版」を引用されて、「BRIGHTNING」の意味内容を認定されておられます。
しかし、この世に非常に数ある辞書・辞典の一つに過ぎないものに「たまたま」記載があるというだけで、一定の意味を有すると認定されるのは無理があると思料致します。
少なくとも、権威ある広辞苑にない言葉については、複数の辞書・辞典などから意味を認定する必要があると思料致します。
(3)BRIGHTNINGは英語である
BRIGHTNINGは、言うまでもなく英語です。
また、WASHも言うまでもなく英語です。
となると、WASHについて、「ランダムハウス英和大辞典」を引用されたのであれば、当然に、「BRIGHTNING」の意味内容を引用されるのも、同じ、「ランダムハウス英和大辞典」を引用されるべきです。
複数の辞書の意味を抽出して意味内容を認定するということは、恣意的に商標の意味内容を都合の良いように解釈しているとの疑義を生じてしまいます。
(4) 本件出願は英語であるのに、カタカナで検索
審査官殿は、本件商標は全て英語の「BRIGHTNING WASH」で出願しているのにもかかわらず、なぜか急に「ブライトニングウォッシュ」というカタカナの使用例を引用されています。
後述するように、「ブライトニングウォッシュ」の使用の引用が適切ではないと判断しておりますが、万が一、引用が適切であっても、カタカナの「ブライトニングウォッシュ」が使用されているからといって、英語の「BRIGHTNING WASH」の使用についての実情といえるのか大変疑問です。
逆に、カタカナが通常使われているのであれば、英語の「ブライトニングウォッシュ」は、「通常の使用」ではないとの証拠にさえなりうると判断いたします。
(5)インターネットでの検索
出願人も、審査官殿と同じようにインターネットでの検索をいたしました。
その際、世界及び日本で最も多くインターネットでの検索として使用されているGoogle検索を使用して、審査官殿と同じ言葉である「ブライトニングウォッシュ」を検索してみました。
2022年9月2日現在、たった「90件」しかヒットしませんでした。
世界のありとあらゆるWeb上の極めて多数の記載を検出できる、Googleでもたった90件しかヒットしないということは、「ブライトニングウォッシュ」は普通に使われているものとは言えないと確信します。
さらに、このたった90件も、その検索1位や上位のほとんどは、出願人によるものでした。
このような例をもって、取引の実情として一般化して、商標の意味内容を理解するのに利用していいものではないと確信いたします。
(6)審査官殿の引用したWebページ
審査官殿は、引用を3つされて「ブライトニングウォッシュ」の取引の実情を認定されております。
しかしながら、この引用は、前述のようにたった90件のうちの得意な3件にすぎません。
しかも、いずれもその内容を見ますと、商品名として使用していると判断するべきものばかりです。
つまり、引用されたWebの記事は、取引の実情ではなく、商品名=商標として使用されている例にすぎません。
このような、商品名としての使用例をもって取引の実情として認定することは不当であると思料致します。
(7)まとめ
以上より、本願商標は、商標法第3条1項3項の、商品の品質・用途を「普通に用いられる」方法で表示したものとは言えないと確信いたします。
そのため、登録査定をお願い致します。
3 その他
本件商品は、出願人にとって5年ぶりにでたヒット商品となっております。
そのため、本件商標の取得については不退転の決意です。
審判及び裁判の許可も既に得ております。
©弁理士 植村総合事務所 所長 弁理士 植村貴昭