広い権利をとれても安心しきってはいけません!穴をあけようと虎視眈々と狙っているかも!
植村 貴昭 この内容を書いた専門家 元審査官・弁理士 行政書士(取次資格有) 登録支援機関代表 有料職業紹介許可有 |
広い権利をとれても安心しきってはいけません!
穴をあけようと虎視眈々と狙っているかも!
ここでは、広い権利をとれた権利者への警告と、
広い権利を取られた競合がどうすればいいのか、
ということを記載します。
広い権利(前提)
この仕事をしていると、広い権利をとることの難しさを痛感しておりますので、
実際はそこまで広い権利というものはなかなか取れるものではないと言えます。
ただ、それでは話は進まないので、広い権利が仮に取れているという
前提で、以下お話を進めます。
なお、ここでは、広い権利とは
その特許を何らかの方法回避して事業化が難しいという状況にあるという
ことにいたします。
広い権利が取れる可能性が一般的に高いものの代表として、
薬や、化学物質が一般的ですが、
電気や、機械等の分野でも不可能ではないです。
なお、広い権利を取ることは大変難しいということについては、
例えば、↓のページをお時間があればご参照ください。
広い権利があれば安心か?
広い権利があるということは、その範囲にはあなた以外誰も
入ってこれなくなったということです。
しかしながら、その範囲であればあなたがすべて自由にできることを意味しません。
つまり、特許は排他については保証しますが、独占(実施できること)を保証しないのです。
ちょっと、訳が分からなくなってしまいましたね。
そこで、もう少し説明させてください。
特許権を取ると、その範囲に柵ができて、他人は入ってこれなくなります。
この理解は正しいです。
しかしながら、その柵の中にさらにあなた以外の柵ができることがあるのです。
いえ、どちらかというと、「ことがある」というよりも、
そういうことができるように特許法は作ってあるのです。
つまり利用関係の場合に、あなたの広い特許の中に、さらに細かい特許が成立するのです。
具体的に言うと、例えば、
新しい化学物質の特許をあなたが取っていても、
その後、その新しい化学物質が一定の用途(癌など)に効くことを、
発見すれば、その化学物質を癌の治療に使うことについては、
他人に特許権が発生しうるのです。
さらに、その化学物質を癌に効くというところまで特許があっても、
癌に最も効果的に適用するには、
ほかのB化学物質と一緒に摂取すると効果が高いという発明についても、
さらにほかの他人に特許が発生しうるのです。
さらにさらに、その化学物質を癌の治療として使い、
B化学物質と一緒に治療に使うとしても、その時間的なインターバルをどうするかや、
その化学物質とB化学物質ととの使用割合についても、
さらにさらにほかの他人に特許が発生しうるのです。
このような場合、
柵の中は最初、全ての場所についてあなただけが自由に動き回れたのに、
いつの間にか、他人がその柵の中にさらに柵を作ることができるのです。
もちろん、後から柵を作った人は、あなたの柵の中でもあるので、
その他人も自由には実施できませんが、あなたも使えない状態になるのです。
その他人によって動き回れなくなった、範囲が狭いうちはあなたも気にしないと思いますが、
それが数が大きくなったり、大きい部分だったり、重要な部分であったら、
あなたの事業活動は大きな制限を受けだすことになります。
そうなってしまうと、後から、柵を立てた人とクロスライセンスを締結したり、
後から柵を作った人に、比較的安く実施権を与えたりしていかなければ、
貴方も事業がうまくいかなくなってしまうという状態になってしまいます。
結論
というわけで、広い権利を取ったからと言って安心せずに、
一定の周期で、さらに研究活動をして、できれば特許出願をして、
他人があなたの広い権利内に柵を作ることを阻止する活動をする必要があります。
他方、広い権利を他人に取られたとしても、
上記のような活動を、続け、広い権利を持っている人が困るという状況に追い込めれば、
広い権利があっても、その事業に参入し、継続して事業活動を続けることが、不可能ではない
ということになります。
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©弁理士 植村総合事務所 所長 元審査官 植村貴昭