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炎感知器の設置基準|特定技能 ビルクリーニング

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表

炎感知器の設置基準

炎感知器は、熱や煙を検出する感知器とは違い、
実際の炎をセンサーが検出し発報する感知器です。
天井が高い空間では、
煙や熱は天井に到達する以前に分散してしまい有効な検出が不可能になるため、
炎感知器によって「赤外線」や「紫外線」を検出し警戒します。

炎感知器の設置基準

消防法では、天井高さ20mを超える空間の火災検出を行う場合、
大空間では上昇した煙が拡散してしまい有効な検出が出来ないことから、
煙感知器での火災検出は不可能であると設定しています。

設置場所の天井高さが高すぎ、熱感知器や煙感知器では警戒不能であるからといって、
「感知器の設置が不適である」とはなりません。
高天井の大空間を警戒する場合には、炎感知器を選定します。

炎感知器はセンサーによって床面にある火種を検出します。
炎感知器の代表的な検出方法は「炎から発生する紫外線を検知」または
「炎から発生する赤外線を検知」する二種類が存在します。

紫外線検出式の炎感知器の特徴と仕組み

紫外線検出式の炎感知器は、炎から発生する紫外線を検出して火災信号を送信する感知器です。炎には多量の紫外線が含まれていることから、これを検出要素としています。

感度が非常に高く、火災を即座に検出する高い安全性を持っていますが、
感度の高さは非火災報の多さともなり、誤報が多い炎感知器とも言えます。
空気の汚れに影響を受けやすいため、埃や粉塵の多い環境では適していません。

紫外線は炎から発生するだけでなく、水銀灯や蛍光灯といった照明器具からも発生しています。警戒対象の場所付近に紫外線を多く発生させる水銀灯や蛍光灯、
殺菌灯、溶接機といった電気機器が設けられていると、
火災と照明器具の区別が付かず誤動作を引き起こす可能性があります。

天井の高い工場の作業場に炎感知器を設ける際には、溶接機を使用しないか、
紫外線を多量に放出する機器を持ち込まないか、十分確認することが望まれます。

赤外線検出式の炎感知器の特徴と仕組み

赤外線検出式の炎感知器は、炎から発生する赤外線を検出して火災信号を送信する感知器です。紫外線検出方式と違い、炎から発生する熱線や赤外線を直接、検出要素として警戒します。
紫外線方式よりも汚れに強く、複数の要素を組み合わせての非火災報の低減が可能です。

赤外線はヒーターの暖房器具からも発生しており、
警戒場所に赤外線を多量に放出する暖房器具があると、
紫外線検出方式と同様、誤動作の原因となります。
燃料を用いて暖房するジェットヒーターがあると、炎感知器は即座に発報します。

赤外線方式の炎感知器は、ちらつき(炎の揺らぎ)を検出する機能を持っているため、
常に同じ熱量を放出する暖房器具や照明器具のように、
一定量の赤外線が定常的に発生するのであれば、火災検出による誤動作の原因となります。

炎感知器の種類

ガス漏れ警報器の設置基準

ガス漏れ警報器は、都市ガスやプロパンガスなど、
燃焼ガスが漏れていることを検知するための感知器で、
ガスコンロや湯沸かし器が設置されている室内に設置されます。

家庭用、業務用の熱源として使用する天然ガスは、都市ガス、
LPG(プロパンガス)が代表的であり、空気との比重の違いにより、
ガスが漏れた場合に部屋の上部に溜まるもの、下部に溜まるものに分類されます。

都市ガスの性質と警報器の設置場所

都市ガスは空気よりも比重が小さなガスであり、ガス漏れが発生した場合には、
天井付近にガスが滞留します。
ガス漏れ警報器は天井面から0.3m以内の部分に設置することで、効果的な検出が可能です。ガス漏れ警報器は、
水平方向にガス燃焼機器が8m以内にある部分に設置しなければなりません。

プロパンガスの性質と警報器設置場所

プロパンガスは空気よりも比重が大きく、ガス漏れが発生した場合、
床面付近にガスが滞留します。効果的にガス漏れを検出するためには、
床面から0.3m以内の部分に警報器を設置します。

都市ガスと同様に、ガス燃焼機器からの距離が規定されていますが、
水平距離で4m以内の場合に警報器を設置しなければなりません。

プロパンガスは比重が重く下部に溜まるので、
厨房やキッチンなどは下部に多数の厨房機器が配置されていることが想定され、
天井に広がるまでには時間が必要です。
警戒範囲を狭くし、早期にガス検出ができるよう考慮された基準となります。

ガス漏れ警報器の設置場所の規制

ガス漏れ警報器は、煙感知器や熱感知器と同様、
空気の流通によって誤動作を引き起こす可能性があります。

誤動作を防ぐため、外気が頻繫に流通する場所や、
空調吹出口から1.5m以内の場所には設置してはいけません。
警戒区域は熱感知器や煙感知器と同様、2以上の階に渡らないことや、
警戒面積を600㎡以内とすることが定められています。

感知器の警戒区域と面積

警戒区域とは、火災発生時に火災が発生している区域を特定するために設ける最小区画です。

アナログ式の自動火災報知設備であれば、感知器固有のアドレスと地図により、
火災発生場所を特定出来ますが、P型受信機を用いた自動火災報知設備では、
「どの区画で火災が発生したか」までしか表現出来ません。

火災発生場所を特定するために、「警戒区域は2以上の階に渡ってはいけない」
「一つの警戒区域の面積は600㎡以下」「警戒区域の一辺の長さは50m以内」
と定められています。

警戒区域設定の緩和措置として「防火対象物の主要な出入口から内部を見通せる場合」
または「光電式分離型感知器を使用している」といった場合は、
一辺の長さを100mまで延長出来ます。

2以上の階に渡らないことについては、2つの警戒区域の合計面積が500㎡以下であれば、
階を渡っての警戒が可能です。
狭小な塔屋階のために警戒区域を分ける必要はなく、下階と一括して警戒可能です。
階段やエレベーターシャフトなど、階を渡って警戒する必然性がある部分は除外されています。

感知器の種類による警戒面積一覧

<設置高さ>      <構造>     <作動>       <定温>         <光電>

                     1種  2種    特種  1種  2種    1種  2種  3種

  • 4m未満        耐火構造     90  70    70  60  20   150 150 150

            その他の構造   50  40    40  30  15    150 150 150

  • 4m以上8m未満    耐火構造     45  35    35  30  不可    75  75  不可

            その他の構造   30  25    25  15  不可    75  75  不可

  • 8m以上15m未満   耐火構造     不可  不可   不可  不可  不可     75  75  不可

            その他の構造   不可  不可    不可  不可  不可    75  75  不可

  • 15m以上20m未満  耐火構造     不可  不可   不可  不可  不可     75  不可  不可

            その他の構造   不可  不可   不可  不可  不可     75  不可  不可                          20m以上     全て      不可  不可   不可  不可  不可     不可  不可  不可

 

上記は、警戒区域ではなく感知器ごとに定められている警戒面積です。
熱感知器は警戒する面積が狭く、低い天井でのみ適用出来る感知器です。

天井が高く、大面積を警戒する必要がある空間では、煙感知器を設置すると良いと思います。
無窓階では消防隊の進入が困難であり、早期の火災検出によって、
安全性を保つ必要があるため、熱感知器ではなく煙感知器の利用が義務付けられています。

天井が高いほど熱や煙の到達に時間を要するため、天井が低い空間と同じ感知器配置では、
火災の検出が遅くなります。
天井高さが4mを超過する場合、警戒面積を半分としなければなりません。
2倍の個数の感知器を設置することで、早期検出を可能にしています。

天井高さが8mを超過する場合、熱の到達が極めて困難なため、
スポット型熱感知器は使用できません。
煙感知器を用いるか、空気感方式の熱感知器を使用して火災を検出します。

高さ20mを超過する高天井空間では、熱感知器、煙感知器のどちらも使用不可能となります。炎感知器を用いて、炎そのものを検出する方法が採用されます。
炎感知器は感度の高い「紫外線方式」と、非火災報が少ない「赤外線方式」が存在します。

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