「オンジョブ」3類化粧品(登録査定)①略語か、②使用の例がある場合に直ちに理解されるかが争点 1 事案

植村 貴昭
この内容を書いた専門家
元審査官・弁理士
行政書士(取次資格有)
登録支援機関代表
有料職業紹介許可有

「オンジョブ」3類化粧品(登録査定)①略語か、②使用の例がある場合に直ちに理解されるかが争点

1 事案

「オンジョブ」をセミナー41類等として出出願していたところ

審査官は、「オンザジョブトレーニング」を意味するとして、
商標法第3条第1項第3号(品種表示であるから識別力無し)と
して拒絶理由通知が通知された。

商願2020-76133号
不服2021-7607

2 反論(審判請求時)

2 意見1 拒絶査定における審査官の判断に対する新たな意見
 拒絶査定時に、審査官は「オンジョブ」が、「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」の略語を認識させると断定されております。
 しかしながら、何らの証拠を示しておられません。
 各種の検索機能が発達しているインターネットで検索すれば、そのような略語が使われているのであれば簡単に見つけられるはずです。
 にもかかわらず、そのような例を一切示していないことは、むしろ、そのような略語としての使い方は、情報が極めて蓄積され、かつ、検索が容易なインターネット上でも、存在していないことのむしろ証明であると思料いたします。
 万が一、略語であるとしても、上記の理由から「普通に用いられる方法で表示」しているものとは到底言えないものと確信いたします。

3 意見2  前回の意見書と同じ意見。
 以下の意見の状況は本審判請求書提出時点においても何ら変わらないと思慮いたしますので、再度記載させていただきます。
 しかしながら、出願人としては以下のように思料いたします。
(1)「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」の略との認定
 しかしながら、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの略は、通常「OJT」が普通であろうと思慮いたします。
 このOJTは、「オージェーティ」と発音するものであろうと思料します。
 この略は、カタカナで7文字です。しかも、「ェ」「ィ」や「ー」は、いずれもそれの直前の音と一体化して発音されるので、実質的に3音に過ぎません。
 他方、「オンジョブ」は、5文字です。すでにOJTという略語がありながら、さらにたった2文字だけ短くするような略語は通常その役目を担えないと思われます。
また、オンジョブは、前の音と一体化する音で考えると「オ」「ン」「ジョ」「ブ」で4音ということができ、短くなっていないとさえ考えることができます。

 そのため、オンジョブが「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」の略とするべきではないと思慮いたします。

(2)オン・ザ・ジョブ・トレーニングの略なのか
 また、そもそも、オンジョブがオン・ザ・ジョブ・トレーニングの略であるとは必ずしも言えず、まったく新しい造語と考えるべきではないかと思料いたします。
 さらに、万一、造語でなく、英語のon jobのカタカナ表記であるか自体も、定かではありません。他の言語である可能性もありえると思慮いたします。

(3)オンジョブから得られるイメージ等
 オンジョブから何らかの意味をとらえるとすれば、「仕事の上で」となるので、トレーニングの意味はどこからも得ることができません。

(4)業界での使用
 オンジョブがオン・ザ・ジョブ・トレーニングの略語として、業界的に意味するとの証拠は、インターネット検索のような非常に広い範囲からのすべての記載を検索できるものでも特段無いように思料いたします。
 審査官殿がご提示いただいた5つの例でもそのような証拠はないように思料いたします。
 万一、そのような例があったとしても、その方個人がそのように表記しているだけで、業界においてそのことを表すとは言えない状況にあると思慮いたします。

(5)普通の表記ではない
 万一、オンジョブが、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの略だとしても、OJTがあるため、普通の表記とは言えないと思慮いたします。

(6)間接的、非具体的な表現にすぎない
 万が一、オンジョブが、オン・ザ・ジョブ・トレーニングの略であり、普通の表記だとしても、本願の指定役務は、セミナー等です。
 一見すると、セミナーで教える内容が、オン・ザ・ジョブ・トレーニングであるといえるかもしれませんが、オン・ザ・ジョブ・トレーニングは「行う」ものであり教えるというのは何を教えるのか定かではありません。
オン・ザ・ジョブ・トレーニングのやり方なのか、オン・ザ・ジョブ・トレーニングによる利点なのか、オン・ザ・ジョブ・トレーニングにおける人事管理方法なのか等、具体的にイメージが定まるものではないと思慮いたします。

 つまり、具体的とはいえず、間接的な表現にとどまっていると思慮いたします。

(7)カタカナな表記
 本商標のオンジョブはカタカナ表記です。オン・ザ・ジョブ・トレーニングは本来的には英語の言葉ですので、通常は、英語での表現が普通です。それを、カタカナ表記するのは普通ではないと思慮いたします。

(8)繋がりよく一息で表現
 オンジョブは、つながりよく一息で表音可能であります。また、外観も特段切れるところなどはなく、この点で、一つの言葉として完成しております。
 そのため、他の言葉の略語と必ずしも言えないものと思料いたします。

(9)「ザ」の省略
 オン・ザ・ジョブ・トレーニングの略だとしても、「ザ」も省略してしまっております。この点も普通ではないと思慮いたします。

(10)トレーニングはもっとも重要な意味内容
 オン・ザ・ジョブ・トレーニングという言葉は、最終的にトレーニングを行うということですので、このトレーニングの語がなければ、何を表すのか全く分かりません。
つまり、「オン」「ザ」「ジョブ」「トレーニング」の4つの英単語のうち最も重要な言葉が、トレーニングであります。

 その最も重要な語を略してしまうのは普通とは言えないものと思料いたします。

3 審判における判断

当審の判断
本願商標は,「オンジョブ」の文字を標準文字で表してなるところ,
当該
文字は,
我が国の一般的な辞書等に採録された成語ではなく,
直ちに特定の
意味合いを認識させることのない一種の造語として認識し,把握される
とみ
るのが相当である。

そして,原審説示のように,ンジョブ」の文字が使用されている例があるとしても,
本願商標の指定役務との関係においては,役務の質を直接的
かつ具体的に表示するものとして直ちに理解されるとはいい難く

また,当審において職権をもって調査するも,
当該文字が,本願の指定役務を取り扱う業界において,役務の質を直接的かつ具体的に表示するものとして取引上一般に使用されている事実を発見することはできず
さらに,本願商標に接
する取引者,需要者が,当該文字を役務の質等を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。

そうすると,本願商標は,その指定役務について使用しても,その役務の質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とはいえず,
自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものであるというべきである

造語であるとの反論

4 教訓

造語との認定を受ければ、後は簡単!

また、3条1項3号の対応のまとめページは以下です。

商標法第3条第1項第3号|商標拒絶理由対応編|商標の教科書

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©行政書士 植村総合事務所 所長 弁理士 植村貴昭

 

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